「一人十色」の時代。

神戸の古着屋haberdashery(ハバダッシェリー)のスタッフブログです。




おとーさん植田です、どうも〜。


前回(2012年12月3日)、「僕にとって古着とは、ノスタルジーを身にまとうことだ」といったような青臭い駄文を書いてしまい、書いたあとに赤面しつつアワアワしてましたが、そのブログが思いのほか、ご好評を頂いたようで・・・。


調子に乗って今回も、文章「だけ」のブログにしてみました。


ですので、普段のような商品紹介を楽しみにしてくださってる方や、長文を読むのが苦手な方は、どうぞスルーして下さい、申し訳ありません。


さて今回は、「流行と現代」について、個人的な意見をつらつら述べてみたいと思います。


☆☆☆☆☆


流行や「業界」のことにうとい僕が偉そうに語るのもどうかと思いますが。


最近のファッション業界では、本当の意味で「新しいデザインの服」は登場していません。


現在、新しく作られる服の大半は、素材やサイズの「新しさ」であったり、いままであまり注目されなかった分野や地域(ネイティブアメリカンの靴とか)に注目した視点の「新しさ」を打ち出したもののように思われます。


だから、襟(ラペル)が膝丈くらいまで垂れたジャケットや、八本足のパンツなんていう、デザイン自体が新しい服はなかなか出てきません。


もちろん一部のブランドやコレクションなどでは、そうした服もデザインされているかもしれませんが、それらが「流行」することは難しいでょう。


だって現在のところ、そうした奇抜な服を着る必然性が見えてこないから。


ある種の服が定着するには、その服のコンセプトが社会に共有され受容されなければならないのです。


また仮に、そうした服のコンセプトが社会に受け入れられたとしても、それが「流行」するかどうかは別の話。


これが例えば、中世のような、情報に触れる機会が少ない時代であれば、流行することもあるでしょう。


しかし現代は、各種メディアや媒体によって、個々人が様々な情報にアクセスできる時代。


その結果、個々人の趣味や好みが多様化した時代です。


つまり中世のような「十人一色」の時代には「流行」という現象が生じやすいのですが、現代は、「十人十色」の時代(近代)を経て、「一人十色」の時代になっているのです。


1940年代のヴィンテージ・ワンピースを着た次の日に、森ガールなゆるふわ系を着て、翌日にはモード系のスタイリッシュなスーツで身を固めても、「変だ」とは思われないのが、「一人十色」の現代。


そのため、服についても新しいデザインを打ち出して流行らすのが難しく、基本的には既存のデザインのリメイクになるのです。


しかしこれは当たり前のことで、流行や「新しさ」とは、過去のリメイクによって産み出されるものであり、いつの時代もそうした「過去の再解釈」によってファッションはつくられてきました。


例えば僕は、1910年代から1930年代のアメリカを象徴する「アール・デコ」というデザイン、スタイルが大好きなのですが。


そのデザインは機能美を追求した幾何学的なもので、いかにも経済成長を遂げた当時のアメリカの雰囲気にぴったりで、そうした「日常生活とデザイン」を結び付けたような、モダァンなスタイルに、僕は魅せられるのです。


しかし「アール・デコ」が流行する下地には、それ以前にヨーロッパで流行した「アール・ヌーボー」という様式美がありました。


さらにさらに、「アール・ヌーボー」に影響を与えたのは、19世紀イギリスのウィリアム・モリスの思想を中核とした「アーツ・アンド・クラフツ運動」です。


このウィリアム・モリスの思想というのは、芸術を一部の特権階級だけが理解し楽しむような「高尚」なものとする考え方を批判し、一方でまた、機械化され工業化された日常生活をもっと彩りのあるものにしようとするものでした。


つまり、「芸術と生活の融合」。


これはまさに、アール・デコの理念に受け継がれ、その後の時代にも影響を与えています。


そんなモリスの思想にもまた、「ノスタルジックな」中世への回帰願望(medievalism)が根底にあります。


こうして考えると、デザインはつねに過去のリメイクを通して再生され、現代に続いているのです。


それを「過去の焼き直し」として否定的に捉えるか、「過去の再解釈」として肯定的に捉えるかで、ファッションの深みと広がりは変わってくることでしょう。


どちらが良いとか悪いとかではなくて。


さて、かなり長々と書いちゃいましたが、何が言いたいのかと言いますと。


こんな「一人十色」の時代だからこそ、いま、古着は面白いのではないかと思うのです。


なぜなら古着屋には、いろんな時代の様々な服が、置いてあるからです。


ある特定のスタイル(モッズだったりロカビリーだったりパンクだったり)を追求し、日常生活や考え方までそのスタイルを貫こうとする、筋の通った人はもちろんのこと。


お洒落の一環として、古着を現代のファッションに取り入れようとする人にも、古着屋は開かれています。


そんな懐の広さが古着屋の魅力であり、「一人十色」の現代にもマッチしているのではないでしょうか?


☆☆☆☆☆


今回も長々と書き散らかしてしまいました。


とりとめのない駄文をここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


以前、オーナーの山本さんと「古着屋って、お客さん一人一人に、その人向けの食材で料理を出すレストランみたいなもんやん。そんな料理屋さんないけどね、ハハハ」といった会話をしていたのを思い出して、こんな文章を書いてみました。


先日、「某ユニーク・クロージング」で寝間着を買って、クリスマス仕様の買い物袋を下げて街をウロウロしてたところ。


「似合わない」、「古着以外も着るんや」、「ふぅん」、「ぬるい」、「とにかく似合わない」


と、各方面で「ディスられまくった」ことへの腹立ち紛れに、こんな内容のブログを書いたとかではないですよ、ええ、断じてそんな私的理由ぢゃないですからねっ、断じてっ・・・いや、多分・・・。



さて、明日はハラちゃんとホリちゃんでお待ちしております♪


そして明日も納品日、可愛い商品がモリモリ入荷予定です!!